それから – 夏目漱石

11月はほとんど本を読めなかった。どうやって10冊くらいを読む時間を作っていたのか忘れてしまったようで、本のための時間がどこかへ行ってしまった。

三四郎、それから、門の三部作を読んだわけだが、いまひとつ今回読んだ「それから」が入ってこなかった。自分がせわしくしていることも大いにあるのだろうが。

「僕は相変わらずだよ」
「相変わらずが一番好いな。あんまり相変わるものだから」

そうして自分に冷淡な一個の息子を作り上げた。尤も代助の卒業前後からはその待遇法も大分変わって来て、ある点から云えば、驚く程寛大になった所もある。然しそれは代助が生まれ落ちるや否や、この親爺が代助に向かって作ったプログラムの一部分の遂行に過ぎないので、代助の心意の変移を見抜いた適宜の処置ではなかったのである。自分の教育が代助に及ぼした悪結果に至っては、今に至って全く気が付かずにいる。

「その代り失敗(しくじっ)て、もう帰って来ました」
老人は苦笑を禁じ得なかった。
「どうして」と聞いた。
「つまり食う為に働くからでしょう」

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