ホームレスになってもやっていけるのかな? なんてことを思うことがあって、シーラチャーは生活圏がギュッと集まっている小さい街なので、よく見るホームレスがいて、その数が街の規模の割に多いように感じたりして(実際にはどれくらいの規模の街にどれくらい居るのかなんて知りもしないのだけど)。ホームレスに興味を持って読んでみた最初の一冊が良かった。とても面白かった。
日本には「無料低額診療事業」というものがある。経済的な理由によって必要な医療を受けることが困難な場合、無料または低額でその医療を受けることができる。
吾妻ひでお著の失踪日記
新宿区区役所に行けば無料でシャワーを浴びることができる。
この日は「ダンボール手帳」の話題で持ちきりだった。これに登録すると、月に三回ほど東京都から清掃の仕事をもらうことができる。2020年11月、渋谷区幡ヶ谷のバス停で女性のホームレスが男性に撲殺された。
言い訳と理屈ばかりでかなり鬱陶しい男ではあるが、黒綿棒のおかげで都庁下でのホームレス生活に楽しみを見いだせたことは言うまでもない。あのまま、ふれあい通りの隅に寝ていたら、ただただ暗い日々になっていたことだろう。共に過ごす相手次第で生活の色は大きく変わる。それは普段いる社会においてもホームレスの世界においても同じである。
2021年4月28日に公表された厚生労働省の調査結果によれば、全国のホームレスの内訳は、男性3510人、女性197人、性別不明117人。この数値の信ぴょう性は不明であるが、女性ホームレスの方が圧倒的に少ないのは、現場を見ても歴然である。
ホームレス入門 上野の森の紳士録 風樹 茂
東京都の生活保護者数は約十万人だった平成10年から増え始め、令和2年には約二十八万人となっている。東京都の生活保護者数の推移を示したグラフを見ると、2008年(リーマン・ショック)から2010年にかけて急激に跳ね上がっているように、景気の悪化によってその数が増えているという見方ができる。
そして大久保にある韓国系キリスト教会。なんとここは月に一回現金をくれるそうだ。
頭の良さそうな兄ちゃんがスマホの画面で言っている戯言よりも目の前で起きていることの方が死活問題なのである。
しかし、金はなくなってしまったが、「その数日間だけは最高の気分だった」と寅さんは笑う。絵に描いたようなダメ人間すぎてもはや愛嬌すらある。
「世間の人たちはホームレスのことを悲惨だと捉えているでしょう。もちろんそういう人もいるんですよ。だけども、今となってはそういう人の方が少ない。昔はそういう人ばっかりだったけど、辛い人は生活保護に行けるようになった(2008年の年越し派遣村を機に)んだから。今でもホームレスやっている人っていうのは僕らみたいに年金をもらっている人が多いんですよ」
「ホームレスという呼び方もそのうち変わるんじゃないかな。昔は”ホモ”と言ったけど、今は”LGBT”と呼ぶでしょう。たぶんそういう方向にいくと思うんだよね」
「たとえば月に7万円の収入でも、本人の気の持ちようや状況によって、その辛さは大きく異なるはずだ。「ちゃんと働いてちゃんとした家に住みたい」と考えている人にとって月七万円という収入は絶望的でしかないが、コヒや長くホームレスやっている人のように「もうこれでい」と現状を受け入れてしまうと、途端に生活にゆとりができる。
ここはわたしがホームレス生活の初日に眠った場所である。あのときはこれから待っている生活に不安しか抱いていなかったが、今となっては「そんなこともあったな」くらいの感覚だ。
想像していた生活とは”いい意味で”まったく違うものになっている。
「人と人との出会いというものは大事にしないといけないからよー。お互い、知らないことを知れるだろ。そういうことだからよー。俺が知ってることは全部教えてやるよー。」
炊き出しを前提に生きているようなホームレスにとっては、「なんでそこまでして金が欲しいのか」という印象でしかない。一般社会でも人によって必要なお金は大きく変わるように、ホームレスも人によってその額は大きく変わる。
取材後の打ち合わせで本書の担当編集の川戸崇央氏に会った際、こんなことを言われた。「ホームレス生活中は感覚が研ぎ澄まされた表情をしていましたけど、その辺にいる普通の人間の表情に戻りましたね」