花火 – 又吉直樹

前に古本屋の棚で見かけて、試しに読んでみたいなぁと思っていたのだが、また行ってみるとまだ並んでいたので手にとってみて。

以外というのはおこがましいし、失礼であるが、面白かった。やっぱり古典と言われるものよりも読みやすいのだが、ところどころに難しい言葉が使われていて、これがテクニックというか表現方法として面白く感じた。短編の小説ですっと読めて、装丁もきれいで、2015年の時点で4刷りされている。

30代の男たちの話で、良かったのだが、40代になった僕としては、40代が持つ悩みや人生を語った小説を探している。10代、20代の若者を描いたものは多くあるし、村上龍のオールド・テロリストは60,70代の老人の話であった。今の僕にあう話を探している。

「なあ、さっきから俺が珈琲カップを皿に置く時、一切音が出えへんようにしてたん気づいてた?」と神谷さんが言った。
「気づいてましたよ」
「ほな、言うて。やり始めたものの、お前が何も言わへんから、やめるタイミングなかったわ」と神谷さんは掠れた声を出した。

狡猾さから無縁の神谷さんは、必ず「真樹の金や」と懺悔のように打ち明けるのだった。

最後の一口を頬張りながら、井の頭公園入り口の緩やかな階段を降りて行くと、冬の穏やかな陽射しを跳ね返せず、吸収するだけの木々達が寒々とした表情を浮かべていた。

その美しさは平凡な奇跡だ。

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