限りなく透明に近いブルー – 村上龍

いっとき村上龍の小説を何冊か読んだ。69、希望の国のエクソダス、コインロッカーズ・ベイビー、愛と幻想のファシズム。限りなく透明に近いブルーもその中に入っていたと思っていたが、読んでみても読んだのかどうだか曖昧な感じが続く。これだけ強烈な麻薬と乱交の描写が続いて、今読んでとてもびっくりした。
坂本龍一がこれを読んで、同じような体験をしているやつがいて、その体験を書いただけで、売れやがって気に入らないち思っていたが、その後にコンロッカーズ・ベイビーを読んで、こいつはすごい。と会ってみたいと村上龍にあってみて、すぐに友達になったという。youtubeを見ると実に仲が良さそうだった。

昔、絵の具のパレットを這とっているやつを殺したが鮮やかな紫色の体液が出た。その時パレットには紫と言う絵の具は出してなかったので小さな腹の中で赤と青が混じったのだろう腐ったパイナップルそっくりの匂い、と僕は思った。

腐ったパイナップルそっくりの匂い、混血のレイ子の脇からの甘い匂いをかぐ。

ものすごい音でミック・ジャガーが歌い始めた。ずいぶん昔の歌だ、タイム・イズ・オン・マイ・サイド。

ヨシヤマは何も答えずにマル・ウォルドロンをターンテーブルに載せた。

ケイは刺したコスモスをまた歯に挟んで抜き取り、スペインのダンサーみたいにテーブルに上がって尻を振る。青のストロボが天井で点滅し回転している。音楽はルイス・ボンファのゆったりとしたサンバ、ケイは濡れたコスモスに欲情して激しく体を震わせる。

肛門に貼り付けられたバンドエイドをそっと剝いでもモコは目を覚まさなかった。

モコのまたはヌルヌルしている。柔らかい上で拭いてやり、指を入れると裸の尻が浮いた。

黒人女の匂いは汗と一緒に僕にくっつき、それを嗅ぐと倒れそうになる。内臓が発酵してしまったような強烈な匂いだ。

体を離すそうとするが黒人女の体はグリスを塗った鋼鉄のようにヌルヌルして硬い。痛みに被さるように体の中心をきりもみされるような快感が下半身に起こる。渦を巻いて頭まで昇り詰める。足の指が焼ける程熱い。肩がブルブル震え始め、大声を出しそうになる。ジャマイカの原住民が好む血と油で煮つめたスープのようなものが喉の奥に詰まっていて、それを吐き出したいと思う。

ジャクソンの肛門は巨大でめくれ上がりまるで苺のようだと思う。

あなた何かを見よう見ようってしてるのよ、まるで記録しておいて後でその研究する学者みたいにさあ。小さな子供みたいに。実際子供なんだわ、子供の時は何でも見ようってするでしょ?赤ちゃんは知らない人の目をじっと見て泣き出したり笑ったりするけど、今他人の目なんかじっと見たりしてごらんなさいよ、あっという間に気が狂うわ。

「あんたにそんなこと言う権利あるの? 一体何のつもりよ、結婚してないからとかそんなのじゃないは一体どうすればいいのよ、どうして欲しいわけ? 愛してるって言って欲しいの? そうなの? じゃあ言うわよ、でも体にだけは触らないで、そいでもういろいろ言うのやめてよ、お願いだから」

犬の吠声を聞きラジオをつけると、ヴァン・モリソンが歌っていたドミノという歌。

第一稿のタイトルは「限りになく透明に近いブルー」ではなく「クリトリスにバターを」というものであった。

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