村上龍の中篇小説(僕は短篇小説と呼ぶくらいのものだと思って読んでいたが、あとがきに自身が中篇と書いていた)は初めてかもしれない。コインロッカーズ・ベイビーや愛と幻想のファシズム、希望の国のエクソダス、オールド・テロリストなど破壊的なものが男っぽくて大好きだが、この55歳からのハローライフもこの先の自分や親のこと、年配の人の人生を想うにとても興味深かった。
この本の影響で、少し値のするミネラルウォーターを飲んでみている。高いと言っても、バンコクではレッドブルが65バーツするので、それを考えればミネラルを多く含んだ水を飲んでみるのは悪くないだろう。この作品とオールド・テロリストでもそうだったが、パニックになった時は水を飲むという、当たり前の動作をゆっくりと行うことで現実感が戻ってくるということをしきりに書いていた。
「ジョウビタキ、小さいのにすごいやつなんだ、お前、そう言ったろ」<中略>「あんな小さなからだで、朝鮮半島と、それに海を越えて、途中、流木とか、漁船のマストとか、留まって、休みながら、一千キロ以上旅してくるんだ、すごいやつだ、そう言ったんだよ」
グルジア産で、ミネラル分が多く、炭酸の量は少なめで喉越しが柔らかい。
いつのまにか日本語での呼び名がジョージアに変わったようだ。僕には日本語ではグルジア、英語ではジョージアの方が馴染みがある。
これまで、名の知れた中堅家具メーカーという目に見えない組織に、ちょうど鎧や衣服をまとうように守られていたのだと思った。
これは僕も旅に行く前に博報堂アイ・スタジオという会社をやめた時にまったく同じことを感じた。まさに鎧を剥がれたと気分だいう表現でまわりの人間に言ったが、アイ・スタジオで働く仲間はもちろん、他の人間にもピンときていないようだった。
咽頭喉頭異常感
あとでわかったのだが、不必要なことは聞かないし言わない、というポリシーが安心感を与えるのだそうだ。
大切な誰かを、心から受け入れるというのは、大変な作業なんだって、まずわかる。
じゃあ、どういう人だったかというと、どれだけ長くいっしょにいても疲れないし、散歩をするだけでとてもいい時間を過ごせるんです。要は、長い人生をともに歩む、パートナーだったんです。
「ゲンイチ、お前、男やからね。べちゃくちゃ喋らんでもええ。ただ、自分がいやなことを人にしたらいけんよ。」
海女たちは、ライバルでもあったが、何よりも非常に親しい友人で、都会に住む者には理解できない独特の友情で結ばれていた。