体系的に書かれたデザインについての書籍ははじめてだったので、興味を持って読んだ。
三渓園聴秋閣階段 江戸時代前期重要文化財 撮影:恒成一訓 『茶室大観Ⅱ』より
もっとも印象に残ったのがこの階段。
直線的な構成を旨とする建物の世界で屋根以外の部分に積極的な意匠として曲線が意識されるようになるのは、鎌倉の禅宗様の導入以後のことだが、それが風雅のデザインとして取り上げられるのは、やはりこの時代である。佐久間将監の作として伝える聴秋閣の階上の楼へ導く階段は、曲によって階段下の高さを確保する洒脱なもので、まさにそうした時代の象徴とも言うべき処理を見せている。
意匠による見た目の美しさがあり、階段の下側のスペースが広くなるというつくり。ものすごくシンプルに造形美と機能美が実現されている。脱帽。