どんな内容なのか全く知らず、読み始めて、オーディションが終わった辺りから物語はミステリーでもあり、僕の好きな村上龍の破壊描写へとドライブしていき、久しぶりにどんどん読みたいと思わされるもので、本当は経済の勉強をはじめたので、その本も読みたかったのだっが、それは後回しにして一気に読み上げた。
1997年の作品というと、今から22年前。
中には懐石料理やバーでの描写などで、執拗に固有名詞をあげつらうが、何かで見た村上龍本人の話によれば、これによって、よりリアルな表現をしているということなのだろう。例えば「シャンピニオン」という言葉があるが、調べてみればただの「マッシュルーム」のフランス名であり、「シューマン」というのは、ロベルト・シューマンというドイツのクラシックの作曲家で、「バトントゥアラー」というのはバトントワリングというスポーツをする者の呼称で、「トラッテリア」とはイタリア式の大衆レストランのことで、先に挙げた懐石料理は懐石料理でなく「郭料理(くるわりょうり)」で、
映画化もされていた。
だからといって相手の顔を全く見ないで話すとたぶん正確を疑われるだろうと思った。内向的な変態だと思われてしまう。
癌はその代表だが、病気で弱りながら、また苦しみながら死んでいく人間は、残される者に優しいあきらめを用意するために痛みや恐怖と戦うのではないかと、良子に感動し、感謝した記憶が青山にはある。