中編小説。
村上龍氏と爆笑問題の太田氏が村上春樹について、「海外で人気がでるのは分かる。多くの人が抱える悩みみたいなものの最大公約数を書いているので。それはすごいこと。青年の悩み」みたいなことを話していた。
僕は村上で言えば、圧倒的に龍の方のファンだが、春樹の方の言葉選びや文体は読みやすく好きで、それを楽しむのに読んでいるようなところがあるが、内容に関してははっきりとした答えみたいなものがあるわけではなくてモヤっとするのが残る。逆に村上龍の場合には「才能がないなんて思ったらダメだ。そっちの方が楽なんだから」のように、ビシバシと答えが明快なので、気持ちが良い。
と言いながらもこの作品も2度目。やっぱり好きなのかも知れない。
「もちろん。いいよ。なんか違う話しをしよう」
「アイロニーって?」
「人が自らを、または自らに属するものを客観視して、あるいは逆の方向から眺めて、そこにおかしみを見いだすこと」
ねえ、僕らの人生は、明るいか暗いかだけで単純に分けられているわけじゃないんだ。そのあいだには陰影という中間地帯がある。その陰影の段階を認識し、理解するのが、健全な知性だ。