交渉術 – 佐藤優

棚に積ん読されていた一冊で、客との交渉に強くなることを別で学んでいたので、ついでに読んでみたが、外交官としての話が多く、ロシアとの交渉がどうとか、ハニートラップがどうとか、僕の世界にはなかなか起こりにくい話でまとめられていた。

ちょうど今日、二度目になる制作の依頼をくれたお客さんとの交渉があった。前回もそうだったが、彼のやり方はうまい。この交渉の前に別のお客さんとの話があり、そちらがうまくいったもので、警戒心が緩んでいた。今回もうまくまとめられてしまったが、その際にニヤリとした笑みがこぼれてしまった。仕方がない。この条件で最善を尽くす。

インテリジェンスとは、通常、入ってくる情報(インフォメーションであるが、それを上司が関心をもつ、例えば北朝鮮問題や世界の石油事情の部分だけ切り抜いてA4判コピー用紙に貼りホチキスで綴じて渡せば、それはもうインテリジェンスだ。これに地震のコメントを加えれば、さらにインテリジェンスの度合いが高まるし、このテーマに関してモサド機関員が入手した秘密情報をイスラエル政府から分けてもらえば、それは高度のインテリジェンスになる。

交渉の目的は、交渉を行うことによって、こちら側の利益の極大化を図ることである。従って、交渉を行うことで、こちら側の利益が損なわれることが明白である場合は、交渉を行ってはならない。

交渉術では、「交渉相手との信頼関係を維持することが、こちら側にとっても最終的に得だ」というようなことが言われるが、それは実は論理があべこべだ。交渉で得をするから、相手との信頼関係を維持するのである。小さいことでは約束を守り、信用させて、最後に一回大きく騙すというのはインテリジェンス交渉術ではよく使われる技法だ。

それは人間も動物の一種だからである。群れを作る動物の習性、セックスのパートナーを獲得するための技法や逃走について、動物行動学から得られる知見は有益だ。

ロシアには「この世に醜い女はひとりもいない。ただ飲むウオトカの量が足りないだけだ」ということわざがあるが、

チェチェン、イングーシ、ダゲスタン

自分に不必要なことは知らないようにしておくことだ。

ソ連時代はレストランは大規模経営なので協同組合には馴染まないとしてカフェだけを認めるという制作をとっていたが、「クロポトキンスカヤ」(ロシア料理)や「ピロスマニ」(グルジア料理)などの協同組合カフェは事実上のレストランであった。

ピロスマにという音に聞き覚えがあったが、グルジアを旅した時に知った、グルジアの画家の名であった。
他の東欧の国と同じように暗い雲がかかり、どうも馴染まなかったが、宿のおばあちゃんが掃除のついでに部屋にあるピアノを開けて、Moonlight Sonataをさらっと弾くみたいなことがあって驚いた。ピロスマニの作品はピロスマニ美術館で見た。

一般論として人間がいちばん大切にするのは自分の命である。その次はカネだ。他人の命よりも自分のカネの方が大切であるというリアリズムがインテリジェンス交渉術では必要なのである。

ハンガリー・フォリント

これも旅の思い出になるが、旅をしながらその国の札に印刷されている人を描くということをやっていた。ハンガリー・フォリント。ずいぶんと久しぶりに聞いた響きだ。

外務省でいちばん質が悪いのは、田舎の秀才だ。努力だけで外交官になったような奴には構想力がない。それにそういう田舎の秀才は、決断力がない。

田舎者だから◯◯だ、ということはないが、閉鎖的だったり、お山の大将だったり、結局田舎者根性が抜けてないのがバンコクにもちらほらいる。ある程度の年齢になるまで、閉鎖的な場所にいると、それから抜け出すには、よっぽど新しい経験に突っ込んでいった場合だけだと思うんだよ。なまじ日本を出ていたりするだけに、バンコクにいる田舎者はたちが悪い。

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