「ちhなみに、薔薇を表す単語は、英語でも、フランス語でも、ドイツ語でも、その他多くの言語でも”rose”だ」
「それに」ラングドンがいい添えた。「”rose”はギリシャ神話の性愛の神エロス(eros)のアナグラムでもある」
「きみたちアメリカ人はお上品ぶりすぎるぞ」ソフィーに向きなおった。「ロバートが口にできずにいるのは、薔薇が女性の性器に似ていて、この崇高なる花を通って全ての人間が生まれてくるという事実だよ。ジョージア・オキーフの絵を見たことがあれば、その意味がよくわかるはずだ。
ジョージア・オキーフ「レッドカンナ」(1919年)
信仰を誇示したがる宗派はいくつかある
もの書きというものは、いちばんまともなやつでさえ変人だ。
「古代における性の観念は現代の考え方と対極をなしていたことを忘れちゃいけない。セックスは新しい生命を創り出しーそれこそ奇跡の最たるものだー奇跡をなしうるのは神だけだった。子宮から命を産み落とすその能力ゆえに、女性は神聖視された。まさに神だ。成功とはふたつに分かれた人間の魂のーすなわち男性と女性のー尊い結合であり、それを通じて男性っは無欠の精神を手に入れ、神との交流を果たすことができる。」
ヘブライ語で神の名を表すYHWHという四文字は、”Jehovah”と綴られることが多いが、本来これは男性を示す”Jah”と、イブのヘブライ以前の呼称”Havah”という二語が結合してできた、両性を備えたことばである。