星の王子さま – サン=テグジュペリ

子供の頃に手にとったのか、学校か親に読まされたのか定かでないが、すぐに挫折したように覚えている。
しかし聖書の次に読まれている本らしく、まあ世界中で有名ということで、目にすることがあったのか、改めて読んでみようというわけで、ページをめくってみたが、いい本。誰もが知っているあの表紙もかわいい。

心があたたまるし、しっかりと自分や他人と対話を続けなければならないと思う。

そうしてその天文学者は、国際天文学会議で、自分の発見についてりっぱな発表をおこなった。ところがそのときの服装のせいで、誰も信じてくれなかったのだ。おとなってそんなものだ。

「ぼく、まっ赤な顔のおじさんがいる星に、行ったことがある。おじさんは、一度も花の香りをかいだことがなかった。星をみたこともなかった。誰も愛したことがなかった。たし算以外は、なにもしたことがなかった。一日じゅう、きみみたいにくり返してた。『大事なことで忙しい! 私は有能な人間だから!』そうしてふんぞり返ってた。でもそんなのは人間じゃない。キノコだ!」

人はしゃれたことを言おうとすると、ついうそが混じってしまうことがある。

「『なつく』って、どういうこと?」
「ずいぶん忘れられてしまっていることだ」キツネは言った。「それはね、『絆を結ぶ』ということだよ…」
「絆を結ぶ?」
「そうとも」とキツネ。「きみはまだ、ぼくにとっては、ほかの十万の男の子となにも変わらない男の子だ。だからぼくは、べつにきみがいなくてもいい。きみも、べつにぼくがいなくてもいい。きみにとってもぼくは、ほかの十万のキツネとなんの変わりもない。でも、もしきみがぼくをなつかせたら、ぼくらは互いに、なくてはならない存在になる。きみはぼくにとって、世界でひとりだけの人になる。ぼくもきみにとって、世界で一匹だけのキツネになる…」

「なつかせたもの、絆を結んだものしか、ほんとうに知ることはできないよ」キツネが言った。「人間たちはもう時間がなくなりすぎて、ほんとうには、なにも知ることができないでいる。なにもかもできあがった品を、店で買う。でもだちを売ってる店なんてないから、人間たちにはもう友達がいない。きみも友だちがほしいなら、ぼくをなつかせて!」
「どうすればいいの?」王子さまは聞いた。
「がまん強くなることだ」キツネは答えた。「はじめは、ぼくからちょっとだけ離れて、こんなふうに、草のなかにすわるんだ。ぼくは横目でちらっときみを見るだけだし、きみもなにも言わない。ことばは誤解のもとだから。でも、日ごとにきみは、少しずつ近くにすわるようにして…」

「たとえば、きみが夕方の四時に来るなら、ぼくは三時からうれしくなってくる。そこから時間が進めば進むほど、どんどんうれしくなってくる。そうしてとうとう四時になると、もう、そわそわしたり、どきどきしたり。こうして、幸福のアジを知るんだよ! でも、きみが来るのが行きあたりばったりだと、何時に心の準備を始めればいいのか、ちっともわからない…ならわしって、大事なんだ」

「ならわしって、なに?」王子さまが聞いた。
「これも、ずいぶん忘れられてしまっている」キツネが答えた。「ある一日を、ほかの毎日とはちがうものにすること、あるひとときを、ほかの時間とはちがうものにすること。たとえば、ここの猟師たちにはならわしがある。毎週木曜日には、村の娘たちと踊るんだ。だから、木曜日は天国さ! ぼくはブドウ畑まで、のんびり散歩にでかけられる。でももし猟師たちが、行きあたりばったりにしか踊らなかったら、毎日がみんな同じようになって、ぼくは少しも休日(ヴァカンス)が取れなくなっちゃうよ」

ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない。

「きみのバラをかけがえのないものにしたのは、きみが、バラのために費やした時間だったんだ」
「ぼくが、バラのために費やした時間…]忘れないでいるために、王子さまはくり返した。
「人間たちは、こういう真理を忘れてしまった」キツネは言った。「でも、きみは忘れちゃいけない。きみは、なつかせたもの、絆を結んだものには、永遠に責任を持つんだ。きみは、きいのバラに、責任がある…」

「人は、自分のいるところにけっして満足できない」鉄道員が言った。

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